Rise Together, Rise Again~もう一度、アガろう。共に、アガろう~ #25平尾充庸

取材・文:荒 大 text by Masaru ARA
撮影:豊崎 彰英 photo by Akihide TOYOSAKI

一向に止む気配を見せない新型コロナ禍。Bリーグに所属する多くのクラブでも難しい状況が続いている。茨城ロボッツも選手・スタッフに新型コロナウイルスの陽性判定者が出たことで、チームは一時的に活動を止めることとなった。その中で、選手やコーチたちは何を見つめ、残る戦いに備えようとしているのか。今回はキャプテン・#25平尾充庸に話を聞くことができた。

体は休んでいても、頭はずっと動いていた

まずは、チームがコロナ禍に見舞われたことに対する率直な想いや、チームが活動を止めていた間、どのように過ごしていたかを尋ねた。

―ロボッツでも陽性判定者が出た格好に。個人としてどのように受け止めましたか

「遅かれ早かれ、どこかでこうした事態が起きるかもしれないとは思っていました。新型コロナウイルスに対して、気をつけてはいますが、それでもなってしまうというところには、このウイルスの侮れなさを感じました。チームで健康観察をしたり、体調管理にも気を配っていた中だったので、しょうがないと思う反面、もっとできることがあったのではとも考えてしまいます。」

―チームの活動停止期間はどのように過ごされましたか

「僕自身は大きなケガをしているわけではないですが、シーズンが進む中で溜まっていった細かなダメージや痛みを取る期間に充てていました。そうやって体を休めている一方で、試合のビデオを見直しながら、どうプレーすれば良かったのか、どうチームを導けば良かったのかというところをずっと考えていました。頭はずっと動いていた感じですね。」

―選手やチームスタッフが行動制限をする状況でした。チームとしてのコミュニケーションはあったのでしょうか

「行動制限期間中は、毎朝『モーニングトーク』というものがありました。チームのみんなでオンラインで顔を合わせてミーティングをする一方で、家の中でできるようなトレーニングもしていました。外や体育館で体を動かせない中でも、心肺機能が上がるようなメニューをトレーナーの皆さんから教えてもらって、それを全員で動きや形を確認しながらという形でしたね。この期間で『誰の目の色が変わったな』というような変化があったかは分からないのですが、僕自身はしっかりみんなを信じていますし、いざ動けるようになったタイミングで、各々の仕事というのをこなしてくれることを信じているという感じです。」

―ある程度目標やモチベーションもありながらの行動制限期間でしたか

「昨シーズンのシーズン打ち切りとは違って、今年は目先の目標があります。去年は試合が中止になったあと、先も見通せない、ここからどうなってしまうのかわからないという中で過ごしていたわけですが、今回は隔離期間が明ければまた試合が行われる予定です。そういったことを考えたときに、モチベーションを保って、しっかり体を作らなければなりませんでしたね。自分たちの残されたシーズンの時間を、大切にしなければならないという気持ちの中でトレーニングができていると思います。」

「戦う」バスケットが見えていた

順調に試合が行われていれば、最終盤に差し掛かっていたであろう時期。平尾としてはチームの戦いぶりに、手応えも感じかかっていたという。

―終盤戦に差し掛かる時期、チームはどんな状況でしたか

「一つ一つのプレーに、遂行力や厳しさなどが出てきて、ロボッツが目指す『40分間戦うバスケット』が見えてきていたところでした。そんな中でのシーズン中断は、ある意味では『もったいない』とも考えてしまいました。やはりロボッツというチームは、『B2の強豪』であってはいけなくて、B1に上がらないとダメなチームです。ただ、それを成し遂げるには、自分一人が厳しさや意識を持っているだけではいけません。目の前で起きていることを、どう『自分ごと』として捉えるかというのは非常に大事だと思います。」

―中断前、記者会見などでも話されていた「自分ごと」という言葉。かなり大事なワードに思えますが

「個々の選手たちが成長したり、あるいはプレータイムを得て立場を作っていく上では必要だと思います。例えば他の選手が指導を受けている場面など、誰か他の人に向かって発信されたことを、自分のことのように受け止めれば、チームとして同じようなミスはしなくなります。今のロボッツは、まだまだ同じようなミスを繰り返してしまっていますし、誰かが叱られたとして、そこから連鎖することなく終わってしまいます。一人一人の気づきが必要な中で、チームは変わろうとしていますが、まだまだという感じです。」

平尾は、2週間という期間、どうしても満足に体が動かせないことのハンディキャップは存在すると話す。だからこそ、この状況下で必要なことは「頭を使う」ことに込められているという。

―ここからのジャンプアップの鍵は、どこに隠されていると思いますか

「2週間、体を動かせていないので、どうしても体力面では衰えるような部分も出てしまいます。そこで体を使うと言うよりはどう頭を使うかという部分を考えなくてはならないですし、自分がコートに立ってしんどい時に、他にコート上にいる4人のことを、いかに考えられるかも必要になってきます。小中学生の時代であれば、思い描いたようなプレーを難なく実現できるのかもしれませんが、プロの世界ではそこに『頭を使ってバスケットを考える』という部分が必要になってきます。」

―体より、頭や心が大事、ということですか

「そうですね。例えば『足を速くしろ!』だとか『もっと高く飛べ!』と言われたとしても、大人になった今では劇的に変わるものではありません。ただ、考える、頭を使うと言う部分には伸びしろがあります。むしろ、プロはそこが成長のほとんどです。強豪クラブとの戦いが続く中で、今までで失敗したことをしっかり反省して、自分たちのプレーのどこが通用するかを考える一方で、どれだけ他の選手を思いやれるかも考える。きつい戦いだとは思いますが、そこを成し遂げるにはチームがひとつにならないといけません。」

独りよがりにならず、チームとして目の前の1試合・40分を戦って勝利を目指す。その姿を取り戻していくことで、シーズン再開とともに、ロボッツは再び全力で戦いの日々を走り抜けてくれるはずだ。

感謝を、プレーでお返しする

最後に、シーズン再開に向けたメッセージと抱負を聞いた。

―ファンを始めとして、応援する方々に向けて、残る戦いへのメッセージをお願いします

「いつ、ウイルスにかかるかわからないという状況の中で、選手たちも戦っていましたし、その中で実際にかかってしまい、2週間行動が制限されてしまうことになりました。ただ、その中で『やっぱり自分たちはバスケットが好きなんだな』というのを改めて感じましたし、ファンやブースターの方、スポンサーさんのありがたみなど、本当にたくさんの方々に感謝し直さなくてはならない期間だったのかなと思っています。僕たちがバスケットができている環境にしっかりと感謝して、バスケットができるタイミングになった時に、しっかりとお返しをするというのが使命だと思っています。その中で、しっかりと勝利を重ねて、B1の舞台に上がれるように、一戦一戦戦っていきます。」

まもなく訪れる、再開の時。感謝の思いを、全力でプレーにぶつけようとする平尾の姿を、会場で、あるいはバスケットLIVEを通して、その目に焼き付けてほしい。

4/7(水)熊本戦 「イソザキ自動車 presents ROBOTS HOME GAME」でリーグ再開!

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