【AFTER GAME】 2020-21第30節 山形戦(4/10~11)~勝って掴んだプレーオフ。見えたチームの進化~

取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
撮影:B.LEAGUE

前節から中2日でアウェーに乗り込むというタイトスケジュールで行われた、山形ワイヴァンズ戦。ハードな条件の中でも、ロボッツの選手たちは決して手綱を緩めずに戦った。GAME1、最大33点差を付けて90-71で快勝を果たすと、GAME2でも終始リードを保って85-70で勝利。連勝を「7」に伸ばし、またGAME1での勝利によって、ロボッツはB1昇格を争う最終決戦である、「B2 PLAYOFFS 2020-21」への出場を決めた。Bリーグ5年目にして初めてプレーオフ出場だが、まだ目標とする「B1昇格」を成し遂げるには通過点に過ぎないことは、選手たちも感じているところだった。また、今節の2試合から見えた、今シーズンのロボッツの「進化」を、改めて掘り下げていきたい。

表裏一体の攻守

GAME1で#11チェハーレス・タプスコットが相手のインサイドを切り裂いて27得点の大爆発を見せたかと思えば、GAME2の主役は1人で7本の3ポイントシュートを沈めた#2福澤晃平だった。ただ、この2人に共通していたことは、単に打って終わりのシュートで得点を重ねたのではなく、しっかりとボールと選手の連動性が保たれていた中でのプレーを貫いていたことだ。

流れが良くない時を例に挙げると、タプスコットの打開力に頼り切りとなって、その前のボール供給の段階から展開が重くなることがあった。それでも勝ってきたことも、今シーズンのロボッツの力強さを物語っているが、ロボッツはそれで良しとせず、改善に取り組んできた。この山形戦、前線の高い位置から相手のディフェンスが張り付いてきても、すかさずパスの受け手が無理のない位置に入り、相手の目先をかわしていく。むしろ、それを利用してワイドなボール回しをしていくことで山形を振り切ろうとしていた。

そして、オフボールの部分でも、フィニッシュをシンプルにするべく、選手たちが動き回って、マークの隙間を作り出していく。リーグ戦再開直前、キャプテン・#25平尾充庸が言葉にした「考えるバスケット」の具現化が、しっかりとできていた証だろう。平尾はGAME1を終えた段階で、戦いぶりをこう表現した。

「何より、みんなが勝ちたいんだなという想いが伝わってきました。」

そして、フィニッシャーの選手たちも、ノーマークとなった段階で迷わなかった。オンボール、オフボールを問わずタフに戦って、アップテンポな攻撃を体現できたことは、ロボッツが今シーズン積み重ねてきた努力の結晶といってもいい結果だっただろう。

一方、この2試合を優位に進められた要因としては、コート上の全員が、献身的にディフェンスで体を張った点も挙げられる。パスワークを始めとして、ボールが動いた状況でのオフェンスメイキングができない山形は、時に意表を突いてキックアウトを狙うボールを飛ばすのだが、そこにもしっかりとディフェンスがローテーションをして走り込むことで、ワイドオープンを作らせなかった。相手ビッグマンに対しては、#4小寺ハミルトンゲイリー、#15マーク・トラソリーニ、#31アブドゥーラ・クウソーがプレータイムをシェアしつつ、しっかりとペネトレイトを阻んだ。特に、山形の#33キース・クラントンに対しては常に先手を打ち続け、GAME1ではほとんど仕事をさせず、GAME2ではファウルトラブルに追い込んだ。代わって出てきた#7ナナーダニエル弾や#10鶴田美勇士が、身体能力やミドルレンジからのシュートで押してくる展開を狙っても、ロボッツディフェンスはその狙いをくみ取るかのように相対し、主導権を渡さなかった。2戦ともに、山形は試合途中から#0アンドリュー・ランダルにボールを託すだけでなく、彼が指示役にもなって攻撃を主導していったが、最後まで山形に連動性を生ませなかった。

結果としては2戦連続で平均失点(シーズン平均78.5)を下回り、「守り勝ち」の側面を見せられたことも、大きな戦果だろう。GAME2を終えて、福澤は次のように語っている。

「アウェーでアグレッシブなチームに15点差をつけて勝利できたこと、また失点は本当は60点台を目指したかったのですが、70点というのは悪くないと思うので、ディフェンスも少しずつできてきているのかなと思います。」

オフェンスでは自分たちのやるべきこと、やりたいことをどう実現するかに集中し、ディフェンスでは相手にさせてはいけないこと、自分たちがやられてはいけないことを決めて流れを止める。そんな、表裏一体の試合運びができれば、この先の難敵がそろう終盤戦でも勝ち進める。そんな実感を得られたはずだ。

改めて浮き彫りになる「層」と「バランス」

Bリーグが始まって5シーズン目。ロボッツはついに、目標とする「B1昇格」に向けての足がかりとなるプレーオフへの切符を手にした。ロボッツに関わる人からすれば、様々な想いが駆け巡ったことだろう。2016年のBリーグ発足時から在籍する唯一の選手である#27眞庭城聖は、プレーオフ進出決定の実感を、冷静に語る。

「ずっと『あと一歩』というようなシーズンを送ってきて、そういった意味でも、やっと達成できたなという感じです。ただ、そこまで喜びがこみ上げてくるわけでもなく、チームとして目指しているのは『プレーオフ進出』ではなく『B1昇格』なので、決められたことはよかったですけど、昇格に向けてがんばろうという感じですね。」

Bリーグ開幕後のロボッツにとっては「生き字引」ともいえる存在となった眞庭。これまでのシーズンとの違いを尋ねると、彼としても感じ取るものがあったようだ。

「終盤になってきて特に思うのは、バランスがある程度とれてきたと思っています。日本人選手も得点をとれますし、外国籍選手ももちろん得点できて、毎回同じ選手が得点をとるのではなくて、ヒーローが入れ替わっているように感じます。そういった層の厚さが出てきているので、特にリーグ戦が再開してから、みんなの力が融合されてチームのバランスが良くなってきていると感じています。」

眞庭が言うところの「層の厚さ」「バランスの良さ」について、2つ気になる数字があるので紹介したい。一つはスターティングラインナップのパターン数、そしてもう一つは選手たちの平均プレータイムだ。今シーズンのロボッツは、ここまで49試合を終えて、今シーズンのスターターのパターンは17通り。選手のケガや途中加入などでメンバーを大きく入れ替えざるを得なかった昨シーズンの19通り(シーズン途中打ち切りのため全47試合)にすでに並ぼうとしている。ただ、昨シーズンとメンバー入れ替えの事情が違い、コンディションや戦略に応じてメンバーを臨機応変に変えながら戦うという、ロボッツにとって「攻め手」の一つとなっている。

平均のプレータイムにおいても、興味深いデータがある。今シーズン、ロボッツで1試合辺りのプレータイムが最も長いのはタプスコット。しかし、そのプレータイムは29分7秒と、30分に届かない。4人の選手が1試合平均30分を超えてプレーしていた昨シーズンと比べると、ここにも差が生まれていることが分かる。誰かに過重な負担がかかることなくシーズンを送ることができている効果は大きい。時に、福澤が「ベンチメンバーで流れを渡さずに耐えた試合がある」という言葉を残すように、誰かの調子がフィットしなくても、それに匹敵する、あるいは上回るパフォーマンスを持つ選手が控えているというのは、大きな武器だろう。

ここからの終盤戦でも、これを活かさない手はない。ベンチ入りした12人の選手が、入れ替わり立ち替わり40分間戦う姿を見せ続けるバスケットを、展開し続けていってほしい。

次の目標は「ホームでプレーオフ」

プレーオフ進出を決めたロボッツ。その一方で次のキーワードとなるのが、「プレーオフのホーム開催権を得ること」だ。圧倒的な強さを誇った群馬クレインサンダーズが地区優勝を果たした今、それを成し遂げるには、今ロボッツがいる「地区2位」の座を守ることが必要だ。次節の相手は2位を争う越谷アルファーズとの直接対決。この試合を勝ち取れるか否かで、2位争いの展望が大きく変わるだけに、攻めの姿勢を崩すことなく戦ってほしい。

越谷は、大黒柱である#5アイザック・バッツが前節でプレーをしなかったため、チームのコンディション面については未知数。しかし、その中でもフル回転の働きをみせた#24チャールズ・ヒンクル、#33クレイグ・ブラッキンズらが、そのままの勢いでロボッツに立ち向かってくるだろう。さらに注目すべき選手は、#91落合知也。攻守に奔走する日本人ビッグマンが活躍すると、越谷に連動性が生まれてくる。1月27日に行われたロボッツ戦ではスターターとして出場し、2桁得点を挙げているだけに、彼をフリーに動き回らせてはならないだろう。

ロボッツに必要になるのは、とにかく手厚いビッグマンディフェンス。1on1、ヘルプの思い切りなど、幅広い戦略が必要となる。そのキーマンとなる選手が、#0遥天翼だろう。今シーズン、何度もそのディフェンス能力とエナジーでチームを下支えしてきた遥の力が、この上位決戦でも試される。今回の対戦でもそれが活かされることを期待したい。

ここから先の昇格に向けては、未知の世界を拓いていく戦いである。これで終わりではない。ロボッツの戦いに、これからもエールとエナジーを送ってほしい。

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