【AFTER GAME】 2020-21第27節 越谷戦(4/15)~戦う姿勢を崩さず、2位争いに王手~

取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
撮影:豊崎彰英 photo by Akihide TOYOSAKI

B2東地区の2位争いの正念場となった、ホーム・アダストリアみとアリーナでの越谷アルファーズ戦。ロボッツは序盤0-14と大幅なビハインドを背負いながらも、折れることなく粘り強く戦い、中盤にはクロスゲームに持ち込む。その後の一進一退の攻防を少しずつ押し返したロボッツは、最終的には101-89で越谷を下し、今シーズン2回目の8連勝を果たしてみせた。これでプレーオフのホーム開催権が得られる地区2位確定に王手をかけたロボッツ。最後まで真っ向勝負を繰り広げた舞台裏に迫る。

前線でも、ゴール下でも戦って

ロボッツは、序盤でいきなり越谷の集中砲火を浴びる形となった。開始から3分足らずで14点のラン(連続得点)を許し、大差をつけられてしまう。果たしてこれを跳ね返せるのか、そう思われてもおかしくない展開だったが、この試合ではむしろここからが本番であった。オフェンスでは根気強くボールを散らし、一方では果敢にリングにアタックして、一本ずつ相手に迫っていく。

この局面での鍵は、インサイドを決して怖がらなかったことだろう。今シーズンの越谷をけん引してきた強力なセンター、#5アイザック・バッツの分厚い壁に立ち向かい続け、#31アブドゥーラ・クウソーや#4小寺ハミルトンゲイリーが積極的にシュートを放っていった。ロボッツはチームとしてリバウンドを争ってものにしたり、1on1をやりきって得点したりと、場面場面での力強さも見せた。リチャード・グレスマンHCは、この試合の戦いぶりをこう振り返る。

「一番大きなポイントとしては、リバウンドで勝ち切れたことだと思います。今日はリバウンドで、最終的に相手より7本上回ることができました。越谷さんはリバウンドに強いチームであることはこれまでの対戦でも、スカウティングでもよく分かっていましたし、鍵になると思っていました。鍵となるリバウンドをやりきれたことが大きかったです。」

結果として、リバウンドを多く取っただけでなく、バッツ、#0畠山俊樹、#91落合知也と、相手のキーマンに対して、次々にファウルトラブルを引き起こさせた。ロボッツも#25平尾充庸や#4小寺ハミルトンゲイリーなどにファウルがかさむ展開になってしまったが、これをネガティブにとらえる必要はない。相手のインサイド陣だけでなく、前線を張るガードの選手に対しても戦いきった証だったといえる。

また、ロボッツが波に乗っていったポイントが、パスワークの部分である。第1クォーター、畠山やバッツに立て続けにスティールを許しながらも、ロボッツはパスワーク、つまり「ボールと人を動かす」という原則と真っ向から向き合い続けた。結果、序盤でこそシュートに持ち込む機会がなかった#6小林大祐は、第2クォーター以降で12得点を挙げ、#2福澤晃平も試合が進むごとにボールに絡むようになり、3ポイント4本を含む18得点を記録。試合の中でチームとしてのプレースタイルを修正し、4人が2桁得点の活躍に至った。試合運びを立て直せた要因について、小林は試合後、このように語る。

「ターンオーバーからのレイアップなど、いただけない部分や反省点も多くありました。うちはパスが回らないといけないチームで、オフェンスにリズムが生まれないとちぐはぐなプレーが出てしまいます。ベンチメンバーがディフェンスで取り返してくれたことも、チームとしての成長ではないかと思います。」

試合の中での修正力、あるいはベンチユニットを含めた手堅い戦いぶり、局面局面で戦う姿勢や遂行力を見せ続けるなど、今シーズンのロボッツの進化が見て取れる。勝てるチーム、あるいは強いチームとしての形は、少しずつできあがっているのでは。そう感じさせられるゲームだった。

武器になってきた「盾」

「盾が武器」。一見すると、文字通り矛盾するような表現ではあるが、今のロボッツは、「打ち合いを制して勝つ」というチームではないことを示すために、あえてこの表現を使いたい。ロボッツは持ち前の攻撃力に加え、シーズンが進む中で守備も改善され続けていることで、チームの戦いぶりが大きく生まれ変わろうとしている。序盤戦の20試合、中盤戦の20試合、そして越谷戦を含むここ10試合での得失点を見ると、それが傾向として分かりやすく現れている。

まずは得点を見ていきたい。序盤戦で85.7得点、中盤戦で91.0得点、ここ10試合では88.6点と、安定してハイスコアをマークしている。100点ゲームの回数は10回を数え、シーズン全体での平均得点は88.4点とリーグ2位の数字だ。

しかし、ここに来てロボッツの失点面が、大きく変わってきた。序盤戦で80.0点、中盤戦で80.1点だった失点は、直近10試合で73.5失点と、大幅にその数字を減らしている。シーズン全体での平均失点も78.7点と、リーグ5位にまで上がってきた。シーズンの長い戦いを見ている中で、薄々感づいていた方もいるかもしれないが、数字から見ても、ロボッツが「攻めて、守って、勝つ」そんなチームに生まれ変わろうとしているのだ。この成長の手応えは、選手たちも感じていた。シーズン中、たびたび「ディフェンスで打開していくことが必要」と話していた、小林の言葉を借りたい。

「矛と盾とよく表現されるんですが、僕らも盾の部分の力がすごくついてきているんですよね。ディフェンスで解決もできますし、個々で我慢してでもこうして点数がとれるというのはロボッツとしての文化のはじまりだと僕は思っています。」

同時に小林が「見習わなければならない」としたのが、次節の相手である仙台89ERSのディフェンス力だ。チームとして高いディフェンス力を誇る仙台は、東地区の王者・群馬クレインサンダーズのさらに上を行くスタッツで、平均失点はB2リーグ最少の数値を誇る。攻撃力に秀でた群馬から2勝をもぎ取ったことからも、そのハードなディフェンスぶりが分かるだろう。

小林は、今後の目標について「ふさわしいプレーを見せていきたい」と話す。それはすなわち、彼が度重ねて口にしてきた「ディフェンスで解決する」という、ロボッツの新たな姿を見せるということでもあるだろう。

前節の山形ワイヴァンズ戦、そしてこの越谷戦と、爆発力を持ったチームを相手に手堅い試合運びができたことは、選手たちにも自信となるはずだ。元来の矛の安定感に加え、「盾も武器」とするような戦いぶりを見せれば、昇格への扉は、自ずと開けてくるだろう。

勝ち取る姿勢を次も見せて

次戦は、中1日というハードスケジュール。ホーム・アダストリアみとアリーナに仙台89ERSを迎える。ロボッツと仙台の対戦成績は、今シーズンここまで1勝1敗。この終盤戦で4回の対決を残し、プレーオフでの激突の可能性もあるだけに、ここでいい印象を持っておきたいところだ。また、他会場の結果次第という条件付きではあるが、ロボッツは最短でもこの節のGAME1を勝利することで、2位争いに決着を付けられる。だが、吉報を待つのではなく、勝ち取るという姿勢を大事に臨みたい。

仙台はシーズン途中に加入した#2ルブライアン・ナッシュがチームになじみ、守り勝ちながらナッシュの爆発力で攻めるという、新たなチームの風土を築きつつある。先述の通り、地区優勝を決めた群馬クレインサンダーズを相手に勝利するなど、上々のチーム状態だ。#5ダニエル・ミラー、#21エリック・ジェイコブセンらのインサイド陣に、#22笹倉怜寿など強力なガード陣を組み合わせ、相手の意図を的確にそらしながら戦うだけに、強力な相手といえるだろう。

ロボッツは、守りから輝きを放つ#31アブドゥーラ・クウソーに注目したい。クウソーは出場を果たせば、日本での個人通算500試合出場という節目を迎える。ベテランの域に達して円熟味を増す、インサイドでの奮闘ぶりに期待したい。

ロボッツにとって、Bリーグ5年目にして初のプレーオフを、ホームで迎えることができるか。言葉にするのは簡単ではあるが、その道のりの途方もなさは、ロボッツに関わってきた全ての人たちが噛みしめていることだろう。難しい夢を、一つずつ現実のものとしてきた今年のロボッツ。チームがまた一つハードルを越える瞬間を、ぜひ目にしてほしい。

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