【AFTER GAME】ケーズデンキ presents B2 PLAYOFFS SEMIFINALS 2020-21 仙台戦(5/15~16)~皆で勝ち取ったB1昇格。そして、いざ最終決戦へ~

取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
撮影:豊崎彰英 photo by Akihide TOYOSAKI

待ち望んだ歓喜の時が、ついに訪れた。リバウンドを掴んだ#25平尾充庸から#6小林大祐へボールが渡り、その小林が感情を爆発させるかのようにボールを高く放り上げ、試合終了のブザーが鳴る。茨城ロボッツがB1への切符を掴んだ瞬間であった。平尾はコートに崩れ落ち、選手・ファン・スタッフは皆歓喜に沸いた。Bリーグ発足から5シーズン、ロボッツが夢に描き続けたB1昇格が、ついに果たされた。選手たちの歓喜の声、そしてB1昇格へ抱き続けた想いを、今回のコラムで届けていくことにしたい。

背負い続けた「覚悟」の結実

B1昇格を手中に収めたその瞬間、#25平尾充庸はコート中央で崩れ落ち、うずくまった。ベンチから選手、コーチ、スタッフが飛び出し、まさに蜂の巣をつついたような騒ぎがコート上で繰り広げられる中、一人、去来する感情を噛みしめるような姿が印象的だった。平尾は試合後の挨拶で、目を真っ赤にして、声を震わせながら、大勢のファンに向けて感謝を述べた。

「本当に、茨城ロボッツに来て良かったと思いますし、皆さんの応援があったからこそ、この接戦をモノにできました。本当にありがとうございました。」

短いながらも、万感の想いがこもった言葉であった。試合後の記者会見で、改めてその場面について尋ねられると、率直な実感を明かした。

「今シーズン、キャプテンをすることになって、いろいろな選手の想いであったり、ファンの方々の想いであったり、スポンサーさんの想いであったりというところを背負って闘うんだという決意を持ってコートに立ったわけですけども、一つの目標が達成できたというところで、自分の中で張り詰めていたものが報われたという感じでした。試合の最後の方なんて覚えていないぐらい、自分の中で込み上げるものがありましたね。」

今シーズン、キャプテンに就任するに当たり、「覚悟」、あるいは「厳しさ」をテーマとして打ち出し、平尾はチームの内部から改革していくことを昇格への鍵とした。明るいキャラクターで目立っていた平尾が、それだけの重圧を背負う決心をしたのだ。

しかし、シーズンが始まると、とにかく厳しさ一辺倒になるということでもなく、時には楽しく、和気藹々とした雰囲気も醸し出しながらのシーズンだった。チームの姿の変貌、そして成長を、平尾はこう語る。

「レギュラーシーズンの中で行くと、気持ちの浮き沈みなどで『闘う集団』にはなりきれなかったところはありました。『僕らはまだなにも成し遂げていない』ということは言っていたのですが、どこかで『これだけのメンバーがいれば勝てるだろう』というような思いがみんなのどこかにあって、それが隙になってしまったり、勝つべき試合に勝てない、接戦を落とす、そんなことにつながっていたのではと思います。それではダメだというところになって、厳しさを追い求めるのか、楽しさやポジティブさを求めるのか、チームメイトで話し合ったときに、ロボッツの良さとは明るさ、楽しさであり、どうやったらその楽しさを出せるかといえば、40分間闘ってこそたどり着けると分かりました。そこが分かったことが今シーズンの良かった点だと思います。」

B1昇格という、チームの大目標の一つを成し遂げたことで、1年間のシーズンを通して、成長を続けたロボッツ。しかし、新たな舞台で渡り合っていくためにも、平尾はチームにさらなる成長を求めようとする。そこのキーワードに、平尾はやはり『厳しさ』を掲げる。

「これからB1の舞台で戦っていくためにも、まだまだ成長しなければいけない。このままでは上がっても下位で戦うようなチームになってしまいます。やはり、B1でも自分たちは戦えるというところを目標としていくならば、厳しさであったり、一人一人の責任感であったり、そういった部分をどんどん追求しなくてはならないと思います。」

キャプテンとしての戦いの日々。そこに対しては、前任のキャプテンである#27眞庭城聖へのリスペクトも忘れていない。

「眞庭選手がキャプテンを務めるに当たって、並々ならぬ思いと覚悟、また責任を持っていたということを、改めて感じたシーズンでした。ただ、僕はまだ32歳ですし、年齢的には中堅どころという感じだったので、年上の選手にも、年下の選手にも、言うべきことを言わなければなりませんでした。ただ、キャプテンとしての発言は、年上も年下も関係ないですし、学生時代にキャプテンをしたときに『お前は優しすぎる』と言われたこともあって、自分の優しさを消さなければいけないのかなと思っていて、今シーズンは厳しくやってきました。だからこそ、マニーがそれぐらいのプライドや覚悟を背負っていたのだなというのは、改めて感じました。」

一方、このコロナ禍にもかかわらず、GAME2には両チーム合わせて2000人を超えるファンがアダストリアみとアリーナに集まった。ある種異様な雰囲気の中でのゲームとなったが、平尾はそれこそが力になったと、感謝を述べた。

「言い方が難しいところはあるんですけど、それだけの環境の中で自分たちがプレーできたことはすごくうれしいですし、この試合に限らず、例えばアダストリアみとアリーナのこけら落としだとか、ロボッツの歴史をさかのぼると、ファンの方々が、ずっとホームコートを作り上げてきてくれました。だからこそ、この大舞台で僕らは平常心で闘うことができました。皆さんの期待に応えなきゃいけないプレッシャーはもちろんありましたけど、自分たちだけで試合をしていたら、もしかしたら相手のシュートがもっと入っていたかもしれない。でも、実際にはそれを外させた。そんな雰囲気を作ってくれたのは、会場に来て下さった皆さんのおかげだと思っているので、感謝しつつ、皆さんの気持ちを背負って、最後まで戦いたいと思います。」

B2優勝に向けての最終決戦、そしてその先の舞台と、決して道のりは平坦ではないだろう。ただ、すでに課題を明確に把握し、それを実行しようとしている。平尾がこの先も、ロボッツの道のりを示してくれるはずだ。ロボッツのさらなる「覚醒」に、今から期待をしていきたい。

「マニさんや桂太くんが、報われなければならない」

B1昇格を経験するのは、2017-18シーズンのライジングゼファー福岡時代以来2度目となる、#6小林大祐。今シーズン、小林にインタビューを試みると、彼は常に「ディフェンス」、そして「ボールムーブメント」の部分を口酸っぱく説き続けていた。小林は冗談めかしたトーンを織り交ぜつつ、改めて自信の役割の変化を語ってくれた。

「うちは、ボールが3つあったら強いんですよ(笑)。でも、ボールは1つしかない。そこで『シェア・ザ・ボール』というのを言い続けてきました。本当は、僕だってボールを持ちたいんです。ずっとそうやってプレーをしてきたので。ただ、今シーズンは違います。点数を取れる選手たちはいるので、1人スクリーンに入ったり、シューターに打たせるためのカッティングだったりをやらないと、チームとしてうまくいかないと思っていました。3x3でそうした知識もつけてきたので、そうしたプレーへの意識で、『周りが上手くやれれば』という感じでしたね。」

ロボッツの昇格を託された存在として、この2シーズンを戦ってきた小林。改めて、ロボッツへ加入した当時を振り返った小林は、大きな決断を下したことを明かした。

「2年前にロボッツの山谷社長から『B1に上げてくれ』とオファーをいただいて加入して、どうやったらB1に上がれるかと考え続けていました。ロボッツに足りないのは、強い相手に勝ち抜く力だと思っていて、その中でなにができるかと考えたとき、自己犠牲として『スターターから外してくれ』というお願いをリッチ(グレスマンHC)に言い続けてきました。僕としては『いいように使ってくれ、助っ人のように使ってくれ』という考えがあって、代わりにスターターで出るツル(#29鶴巻啓太)には、『全力で行け、ミスしても尻拭いはする』とも伝えていました。それが功を奏したとも思いますし、マニさん(眞庭)や桂太くん(岩下桂太アシスタントコーチ)が5年間積み上げて、願い続けてきたことがようやく成就できたということが一番嬉しいなと思っています。」

Bリーグ発足時、B3所属となった福岡に加入した小林。そこからB1まで駆け上がった経験が、そのままロボッツに活かせるかと言えば、そうではなかった。ロボッツがB1昇格を成し遂げるためには「難しさがあった」と話す。

「僕はロボッツがB1に上がるのは、難しいのではと考えていました。福岡にいたときは、地元出身の選手も多くて、『僕らが勝たなければ、福岡が終わる』というぐらいの感覚でプレーしていましたし、昇格しなければいけない、それが僕らのタスクだという方向性を出せたんですけども、ロボッツは、いろいろなバックボーンを持った選手たちが入ってきて、『ロボッツをB1に上げる』と言っても、なかなか方向性を見いだせなかったんです。ただ、リッチが僕らをまとめてくれたのもありますし、堀オーナーや山谷社長が報われてほしいという想いもありました。一方で、マニさんや桂太くんがやってきたことも、報われなければならない。そういう話をしていくうちに、自然とチームの方向性は固まって、こうして形になりました。」

眞庭や岩下に限らず、今回のロボッツの昇格には、今までロボッツで戦いながらB1昇格という目標を成し遂げられなかったメンバー、あるいはプレーオフでロボッツに敗れた佐賀バルーナーズや仙台89ERSが、同じようにB1昇格を目指してきた思いも込められている。さらに、ファン・ブースターやスポンサーなど、「これまで」のロボッツを支えてくれた人、向き合ってくれた人たちの思いや願いが、ようやく実を結んだと言えるのだ。

報われた「これから」のロボッツが、最終決戦やB1の舞台でどのような戦いを見せるのか。小林の力、そして彼がB1を戦った経験は、未来のロボッツにおいても必要とされるはずだ。

最終決戦、敵地で栄光を掴め

今シーズンのロボッツが目指してきた「B1昇格」。それを成し遂げた今、残る目標は「B2制覇」だ。ファイナルの相手は、今季のB2東地区を圧倒的な強さで制した群馬クレインサンダーズだ。レギュラーシーズンでは、序盤戦に敵地で4戦を戦い、全て敗れはしたものの、この上ないリベンジのチャンスであると捉えたい。

この戦い、両チームともに、誰がキーマン云々という話ではない。今シーズンのB2リーグの総決算ともいうべき戦いで、ロボッツが総力戦で必ずや勝利を収めてくれることを祈りたい。ただ、同時にロボッツはあくまで「チャレンジャー」であることを、しっかり見定めなくてはならない。B1昇格という喜ぶべき事実はあったが、そこに気を緩めることなく、1試合40分をしっかり戦いきることの積み重ねで、群馬から勝利をもぎ取ってほしい。

今シーズンを最高の結果で終えることは、ロボッツを支える皆の新たな願いだ。2020-21シーズン、ロボッツの最後の奮闘を見届けてほしい。

ハイライト動画

Game1
Game2
おすすめの記事