【AFTER GAME】 2021-22 川崎戦(11/13~14)~我慢の日々は続く。ベテランたちが示す道~

取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
撮影:豊崎彰英 photo by Akihide TOYOSAKI

約1ヶ月ぶりに、アダストリアみとアリーナでの開催となった、ホーム・川崎ブレイブサンダース戦。強豪に好ゲームを展開していたロボッツは、GAME1でオフェンシブなゲームを展開する。しかし、ゲームの締めくくりに来たところでぎこちなさを見せたロボッツは、川崎の巧さの前に96-105で敗れる。雪辱を誓ったはずのGAME2も、要所で川崎に走られ続けて67-93で連敗。苦しいゲームが続く中、ロボッツは今後どのように歩んでいくべきなのか。#8多嶋朝飛、#55谷口大智の両ベテランの言葉で、紐解くことにする。

ハードに、それでも大事に

出鼻をくじかれるように、試合の入りでリードをつけられる。そして、幾ばくかの膠着状態を経て、再び相手に突き放される。開幕直後の数試合と比べてみれば、ロボッツのゲーム展開はそこから脱しつつある。ただ、リード、あるいはシーソーゲームの場面を続けておきながら、肝心の場面で相手にねじ切られる。そんな展開が続いてしまうことは見る者にとっては心苦しい。つい答えを求めたくなってしまい、多嶋に質問をぶつけてしまう。彼は冷静に、試合終盤でのチームワークを語った。

「すごく難しいことですし、結果論になってしまう部分も存在しています。どのチームであろうと、『勝てればOK』と考えている部分はあると思います。その中で、正直僕もクロスゲームの展開でどうプレーすべきかというのは確立しきっていない部分です。ただ、ロボッツに対して言えることは、あまりコントロールという部分に出たくないのだろうとは思います。常にアタッキングモードであり続けて、思い切りのいいディフェンスをし続けて、ロボッツの波に押し込んでいくようなイメージは感じているんです。」

とは言え、そのマインドは相手にとっても同じこと。長いシーズンとは言うものの、その1勝が悲喜を左右することは、互いに痛いほど分かっている。その上で多嶋は、今のロボッツにこんな部分が必要であることを明かす。

「1ポゼッション、1ポゼッション、いろいろ細かい部分のミスを突いたり、相手のウィークポイントを突いたり、そんなことが重要になる部分もあると思います。自分はそういった場面を経験してきていて、相手が嫌がることを考えた上で組み立てていくということも一つ必要だと思っていて、そこをゲームにどう組み入れていくか、チームともそれが必要だとどう共有していくか。コーチや他の選手と話していることもありますが、もっといろいろな改善方法があると思っています。」

アップテンポなオフェンス、ハードなディフェンス。5年間にわたるB2での戦いに終止符を打ったのは、シンプルにして明確なスタイルがあったからこそだろう。ただ、そればかりではという局面も往々にして訪れるもの。現に壁に直面しているロボッツに何が必要か、多嶋はこう続けた。

「自分たちのスタイルで押し切れないときに、自分たちがどうゲームや相手の動きを読みながら、そのポゼッションを、ある意味大事にやりきれるか。オフェンスであればシュートへのつなぎ方、ディフェンスであってもタフショットへの追い込み方。そう言った部分を養っていくことは、今後絶対に必要になってきますし、たとえ相手がどんなメンバーで出てきたとしても、自分たちがどのメンバーでコートに立っていたとしても、それを可能にできるか。そんなチームになれたら、クロスゲームも物にできて、必然的に雰囲気も良くなれるでしょうね。勝つチャンスが見えてきている中で、自分たちの自信に変えるためにも、クロスゲームを、様々な方法で勝ちきること。それを自分たちで『良かったね。けどまだ改善点はあるよね』と見出して行けるように。またいい状態で試合に臨めるように準備をしていきたいと思います。」

幸いにして、B1での戦いはバイウィークに突入する。心身を休め、また前向きにコートへと戻ってきてほしい。逆手にとって考えれば、まだシーズンは4分の1しか消化していない。中盤戦に向けた反逆に向けて、しっかりと戦うイメージを作っていきたい。

「みんな家族だと思っている」

厳しい場面で投入され、シューターとしてここぞというシーンを作り、得点を奪っていく谷口。劣勢だったGAME2の第4クォーターで見せたシュートタッチの良さに、胸のすく思いをした人もいるだろう。「来ていただいた人たちのためにも、最後まで見せ場のある試合にしたかった」という彼の想いが、しっかりと形になって現れた。もちろん彼の「見せ場」はそれだけではない。ベンチやロッカールームでの立ち振る舞い、特に相手のフリースローを放とうという場面で、スタンドでメガホンを打ち鳴らすファンをこれでもかと煽る姿には、頼もしさも見える。谷口という男が今のロボッツに欠かせないピースであることは、もはや疑いようもない。GAME2を終えての記者会見で、改めてそれを感じさせられたのだった。苦しいシーズンの入りとなっている中で、彼はしっかりと前を向いていた。

「負けが込んでくると、どうしても原因を追求しがちな部分も出てきてしまいます。当然、そういった役割をコーチ陣が持っているということもありますが、僕たちは彼らに信じられてコートに立っているんだという、自信を無くさないこと。そして、これだけファンの皆さんが見に来てくださっている中で、僕らはしっかりファンの皆さんに応援したいと思わせるようなプレーで返していくことが必要になってくると思っています。そこに勝利が付いてくれば、自然とチームができあがっていくでしょうし、1ヶ月前と今では実際に全然違います。どんどんチームが進化していく過程を皆さんにも楽しんでもらいたいです。」

これまで在籍していたチームでは、一段上の段階での戦いに臨もうとする段階での「もがき」に直面してきた谷口。今のロボッツにその状況を照らし合わせて、前向きに奮起を促そうとする。

「秋田時代も、広島時代も、『もう少しで勝てるのに』というゲームがシーズンの中でほとんどでした。だとすれば、僕らが我慢して切らさないようにしていく必要は絶対にあると思います。『なぜだ』という思いは、コーチも、選手も、もちろんファンの皆さんも、皆さんが考えていることなんですけど、『これだ』と言葉にはなかなかできません。僕たちは、勝てないゲームを体験して、勝つためのアジャストをしていく。ロボッツは、そこの段階に来ているのではと思っています。ここのところのもどかしい展開は、次につながるんだと、ポジティブに捉えています。」

感染症対策の名の下、ファンが声を出すことがまだ叶わない今シーズン。だからこそ、谷口がチームを、アリーナを盛り上げてくれる姿は、特に大きな意味合いを持っている。彼が全身で身振りを交える姿に惹かれるというロボッツファンも多いことだろう。得てして、もう何シーズンもそこにいるかのような不思議な感覚に陥ることもある。そこには、彼なりの人との向き合い方が存在していた。

「日本のバスケットのシーズンってとても長くて、ベンチメンバー、スタッフの方とほぼ毎日顔を合わせるわけです。僕はみんなを家族だと思っていて、当然ファンの方もそうです。ある程度、皆さん同じ席に座っていたり、僕の背番号が入ったグッズを持っている方なんかはすぐ目に付きます。なんというか、僕はもう皆さんをすごく愛していて、大好きで。たまたまとは言え、このチームで戦うことができて、同じ苦しみを味わっている。僕らは僕ら、ブースターはブースターなんて別々なことは無いですし、全員で戦うということはシーズン前からチームでも共有していることです。それを体現したいからこそ、考えるより先に行動に出ているんだと思います。」

関係性が深まり、共に厳しい状況に身を置いていても、「確実に、みんなが持つチームに対する方向性はブレていない」と谷口は言い切る。それもまた、谷口がチームへの愛着を深めている一因だとも話す。彼は続けて、「負けているからといって、誰かを責めるような声もない」と、ロボッツの現在地を確かに教えてくれた。その声にこもった力に、こちらがハッとするほどだ。今回取材を試みた多嶋や谷口に限らず、ロボッツの面々は誰一人として目の前の戦いに対して甘く見るようなことをせず、かと言って「負けてもともと」などとも考えていない。厳しい結果に終わったとして、悔しさや反省を口にする選手がいても、それを必要以上の悲壮感にはつなげない。リチャード・グレスマンヘッドコーチがたびたび「選手たちを誇りに思う」と口にするのも、そうした現れであろう。

そうしたチームだからこそ、谷口も素直に愛を言葉にできるのだろうとも思える。「もう少し」という結果が続いた序盤戦。谷口が、勝つことでファンに対して愛を分かち合えるような試合を見られるのは、そう遠くない未来の話なのかもしれない。

王者との初対戦。堂々と立ち向かって

開幕からの怒濤に日程を終え、B1での戦いは一度中断期間に入った。心身をリフレッシュし、また新たな局面に臨んでいきたいところである。

再開後の初戦の相手はB1東地区の千葉ジェッツ。昨シーズンのBリーグチャンピオンとの初対戦を迎えることになる。スター選手揃いの千葉にあって、日本バスケ界が誇るポイントガード・#2富樫勇樹の存在は、今さら語るまでも無いところだ。しかし、彼への警戒は日に日に強まっていて、第6節の滋賀レイクスターズ戦では、富樫が全くプレーに関与できず、千葉はオフェンスで「4対4」とも言うべきフォーメーションでの戦いに至った。それでも勝利する辺りは流石と言うべき層の厚さ。ロボッツにとって、学ぶべきポイントの多い試合となるだろう。

千葉との戦いは、ベンチも含めた総力戦は必至。特に富樫を抑えたとしても、#11西村文男がきっちり試合をコントロールできるという明確な強みが存在する。また、インサイドでも帰化選手の#21ギャビン・エドワーズを擁して戦う千葉を相手に、ファウルトラブルに陥らず、インテンシティを保ち続けるという難題を両立させる必要がある。B1で戦えるチームになっているかという現在地を確かめるためにも、ここは抜かりなく挑んでほしいところだ。

ロボッツとしては、川崎戦で実力の片鱗を見せた#22ハビエル・ゴメス・デ・リアニョと、#13中村功平に活躍を期待したいところだ。ゴメス・デ・リアニョはシュートセンスの良さと鋭いカッティングを武器に、川崎相手のミスマッチをよく作り出していた。一方ではディフェンス面でもう少し奮起できれば、より作戦の幅を広げていけることだろう。中村も、ここまで苦しいシーズンを送ってこそいるが、ロングシュートだけでなく、難度の高いパスを通しに行く視野の広さは、一見の価値がある。今シーズン、ディフェンスの裏を抜けていく形で得点機会を演出する選手が多いだけに、彼がここで一つ見せ場を作れるかに注目しても面白いのではないだろうか。

間違いなく格上と称して差し支えないだろう千葉との戦い。ただ、そんな彼らから勝利をもぎ取ることは、この序盤戦の中、上位チームを相手に得られそうで得られなかった「勝ちきる」という経験を手にすることに他ならない。その経験こそが、今後のロボッツを2段も3段も高みに導いていくことになるだろう。戦いの中で「BUILDUP」した姿を、バイウィークを経て王者相手に見せつけられるか。再び連戦が続く中盤戦の幕開け、ロボッツの力強さに期待したい。

おすすめの記事