【AFTER GAME】 2021-22 三河戦(5/4)〜「チームとして」戦う原動力は尽きることなく~

取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
撮影:豊崎彰英 photo by Akihide TOYOSAKI

レギュラーシーズンも残り3試合。新型コロナウイルス感染症の影響で中止・延期となっていたシーホース三河との代替試合がアダストリアみとアリーナで行われた。共に1勝を巡って飢えていた両者は序盤から激しい点の取り合いを展開し、混沌とした状況で試合が進む。ロボッツは#2福澤晃平、#55谷口大智を筆頭に3ポイントのシュートタッチを武器に追いすがったが、98-110で敗れ、勝ち星奪取とはならなかった。一方、この試合では#8多嶋朝飛が復帰するという明るい材料もあった。残り2試合、ロボッツは何を得て戦い続けるか、多嶋と#11チェハーレス・タプスコットの言葉を中心にたどっていく。

戦う理由が、彼らにはある

ミスマッチをしつこく突かれ続けた試合だった。自力でのチャンピオンシップ出場を確定させたい三河は、超攻撃的な布陣を敷いたこと、そして#32シェーファーアヴィ幸樹が前半だけで22得点の大当たりをしたことで波に乗る。対するロボッツは、前半にインサイドを死守して得点源となった#21エリック・ジェイコブセンが第3クォーター序盤でファウルトラブルに陥り、このクォーターの終了直前にファウルアウトに追い込まれる。ジェイコブセンがいないインサイドを狙い撃つかのように、#14ジェロード・ユトフと#9アンソニー・ローレンスⅡによるホットラインが得点を積み重ね、手がつけられない状態になっていった。

その中でロボッツは、残されたメンバーでしっかり試合を戦い抜く選択をする。タプスコットが前節の横浜ビー・コルセアーズ戦に続き、2試合連続のフル出場を果たしたかと思えば、第4クォーターでは谷口が10分間コートに立ち続け、シュートラッシュで見せ場を作った。

もう何度このコラムで書いたことか分からないが、ロボッツを取り巻く状況は決して順調ではない。ただ、彼らは戦い続け、勝利を目指している。何が、彼らをそうさせるのか。タプスコットはこう答える。

「いくつか理由があって、まずは素晴らしい応援やサポートをしてくれる、ファンのために戦いたいんです。もう1つは、ロボッツというクラブや組織のために戦いたい。いつも、自分たちのことを支えてくれますし、こうして素晴らしい試合の環境も作ってくれる。だから彼らの為に戦いたい。」

ここまでを聞くと、リチャード・グレスマンHCと長く行動を共にしているタプスコットだけに、なるほど「Unselfish」の体現者らしいと思わされる。ただ、ここからがアスリートであり、プロたる彼らを表す言葉なのだろうと、同時に思わされた。

「最後は自分たちと、自分自身のためです。我々は全員、Competitive(競争のある)なバスケットが好きですし、そうした機会が大好きなんです。しっかりと、この状況を戦いながらも楽しみたいんです。チームとして、戦いを楽しみつつ、より良い戦いにしていきたいんです。」

例えば学生ならば。高校なら3年、大学なら4年の機会の中で成長や克服を重ねていくということもできるだろう。ただ、プロである彼らに目線を移すと、1年、あるいはこのB1の舞台で過ごした一日一日を全て骨身にするぐらいの感覚を持っておかなければいけないのかもしれない。そして、今のロボッツの面々には、そうした覚悟が宿っていると、改めて感じさせられた。

シーズン前、あるいはシーズン当初に思い描いていた青写真から考えれば、今のロボッツの姿は少々どころではなく違うところがあるだろう。だが、彼らはその都度なりたい姿や、あるべきチームの姿を再定義し続け、その実現に向けて動き続けてきた。シーズンが残りわずかなのが惜しいぐらいだ。だが、この歩みは決して意味のないものではなかったと、胸を張れる瞬間が来てほしい。

「楽しさ反面、怖さ反面」

4月17日の横浜ビー・コルセアーズ戦の試合中に負傷して以来、コートから遠ざかっていた多嶋が、17日ぶりにコートに立った。ファンの拍手と共にコートに送り出された彼は、17分あまりプレーを続けて9得点。コンタクトの激しいプレーもこなしたほか、三河の#4細谷将司に対するマッチアップで軽快さも見せるなど、その動きにほっと胸をなで下ろしたファンも多かったはずだ。試合を振り返った多嶋は、こうコメントを残す。

「プレータイムを含めて動きに制限があって、練習もほぼできない中で久々にみんなとプレーをすることになって、楽しさ反面、怖さ反面という感じでした。あとはチームのために何ができるかを考えてプレーをできればと思いました。」

ケガの後もチームには帯同していた多嶋。ベンチ外とはなりながらも、同じように負傷欠場が続く#13中村功平や#14髙橋祐二と同様に、試合後にはシューティングやコート上でのランニングを含めた調整を続けていた。チームによれば、傷めた脚のケアを欠かすことなく続けていたとは言うが、戦線復帰は文字通りの突貫作業だったそうだ。

「チームとしての練習メニューに参加したのは三河戦の前日、1日だけでした。ただ、そこまで違和感もなく行けたのではないかと思います。ただ、まだ傷めた部分は100%の状態ではないので、状態をコントロールしながら、自分ができる範囲でしっかり準備をしてプレーやプレータイムにつなげられたのではないかと思います。」

1年という時間は不思議なもので、多嶋がもう長いことロボッツの一員としていてくれたかのように感じることが増えている。タプスコットにも尋ねた、今のチームの原動力について質問すると、多嶋はこう答える。

「今シーズンからロボッツにいてシーズンを戦っている中で、『ブレない』という言葉よりは『ロボッツというチームはこうやるんだよ』というのを感じる瞬間があるんです。どんな対戦相手でも、どんなチーム状態でも、しっかり戦うことができるようになってきていると感じます。もちろん、どの試合だって勝ちたいですし、『もっとできれば良かったのに』という場面も出てくるんですけど、シーズン当初にやっていた内容にはもうならないというか。どんな相手でも戦い抜くことができる、ついていくことができる。大きな連敗をしないことを含めて、チームとして築き上げてきたものがしっかりあるという感覚は、僕自身の中であります。チームとしてやったことが身になって、シーズンの最終盤に来られているのかなと、思う部分はあります。」

「BUILDUP」というシーズンのスローガンが掲げられ、「土台作り」と口にした者も多かったからこそ、ついこの1年での成長に目を向けてしまいがちな部分はある。それ自体は決して間違ったものではないだろう。ただ、同時に「これまで」のロボッツが、人の入れ替わりが多く起きる中でもしっかりと作ってきたものもある。しばしば、バスケットに限らずスポーツの世界では作ろうとした土台が全て失われてしまう瞬間が訪れる事がある。ある意味、連綿と築いてきたものの中に、今のメンバーがあり、さらに未来のロボッツを作っていくのでは。そう思わされたのだった。

そんな彼も、残り2試合に対する戦い方についてはこう話す。

「どんな状態になっても、チームとして諦めない姿を見せ続けて、それをコート上で体現し続けるのがロボッツの良さだと思います。もちろん、勝つために必要なことはまだあると思いますし、できることもあるだろうとは思います。その中でも、みんながそれぞれ自分の出せるものを全員出しに行こうとプレーしていると感じます。残り2試合も、その上で勝利をつかみ取れるように、チーム全員で準備をしていければと思います。」

改めて、コートに彼がいることでの落ち着きが、チームに新たな活力を与えると知らしめた。頼れる男が、最終節にどんな魔法をもたらすのか。楽しみは多い方が良いと思わされた40分であった。

チームの集大成を見せつけろ

シーズン最終節の相手は群馬クレインサンダーズ。今季はロボッツが2戦2勝と分の良さを見せているチームだ。次節で1勝を挙げれば、ロボッツとしては今季唯一となる、直接対決での勝ち越しを決められる。群馬は直前のサンロッカーズ渋谷戦で#4トレイ・ジョーンズ、#15アキ・チェンバース、#40ジャスティン・キーナンが揃ってエントリー外となったほか、#13笠井康平がプレータイム無しに終わっており、ロボッツ戦に向けたメンバーが読めない状況となっている。とは言え、群馬としてもロボッツ相手にこれ以上負けられない状況であるはずで、フルパワーで向かってくることだろう。

群馬の注目選手は、#3マイケル・パーカー。キャプテンに就任した今シーズンは、41歳にして群馬の全53試合にスターター出場を続ける鉄人ぶりを発揮している。この対決でも脅威にならないはずはなく、群馬の高く、分厚いオフェンスの土台を担うことは間違いないだろう。

ロボッツは、ここまで築き続けてきたチームとしてのバスケット、言い換えれば「BUILDUP」の集大成を見せられるかどうかが試合の浮沈を握る。よって、この試合では注目選手を挙げず、コートに立つ全員の仕事ぶりに注目していきたい。誰がコートに立っていても、それが「茨城ロボッツ」なのだと見せつけるように、残り2試合を戦いきってほしいところ。文字通り、やり残しや悔いが残らないシーズンの終わりになることを目指してほしい。

繰り返すようになるが、このメンバーが見せる茨城ロボッツのバスケットは、この2試合が最後となる。B1初年度の戦いぶりを振り返りつつ、会場で、あるいはディスプレイ越しに、彼らの戦う姿を心に焼き付けるとともに、今シーズン最大の応援を送ってもらいたい。

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