【AFTER GAME】 2022-23 仙台戦(3/15)、広島戦(3/18~19)~ブレさせず、切らさず。挑み続けた3連戦~

取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
写真:茨城ロボッツ、B.LEAGUE photo by IBARAKIROBOTS,B.LEAGUE

水曜ゲームが挟まることで、移動、また移動を繰り返していく終盤戦。ロボッツはアウェーでの仙台89ERS戦を皮切りに、中2日で広島ドラゴンフライズとのホームゲームに臨んだ。シーソーゲームを押し切った仙台戦、逆に押し切られた広島戦。終盤戦の課題が改めて見える3試合となったはずだ。

「一喜一憂しない」

最終盤まで相手との主導権争いを演じながらも敗れた、広島戦のGAME2。それを終えて記者会見に登壇した#8多嶋朝飛は、試合を振り返って、開口一番「勝ちたかったゲームだな、と」と話し、さらにこう続けた。

「すごく粘り強く、離されても追いついて。エナジーも出し合って、会場の雰囲気も後押ししてくれて。全てが完璧ではないにせよ、こういう内容の中で勝ちたかったという、第一印象でした」

前日のGAME1は、後半だけで54失点を喫してしまい敗戦。追いかける展開となった中でのディフェンスの改善度合いが求められる試合ではあった。GAME2の第3クォーターでは、7失点に抑えて、ロボッツが一時逆転に成功するのだが、ディフェンス面での戦い方について、多嶋はこう話す。

「ヘルプや寄せ方の部分では多少の変更点こそありましたけども、そういった部分はあまり関係がなくて。(GAME1では)チームとして『このやられ方だったらセーフ』としていたタフショットでさえ、自分たちで切らしてしまう部分がありました。それを外させて、リバウンドを取っていくことが、自分たちのディフェンスとしてやりたいことだったわけで、そこを目指す、そしてそこに一喜一憂しないというところを選手間でしっかり話せていたことだと思います」

一喜一憂しない、という多嶋の言葉はこの3試合を通じたキーワードだったようにも思える。#24ジャスティン・バーレルや#25ラショーン・トーマスが体を当ててのアタックを仕掛け続けた仙台戦では、そうしたプレーをしのぎ続けたことで相手のテンポを抑えていった。また、押し破られるシーンがあっても、立て続けにやられるシーンは防いでいった。この組み立てについては、#21エリック・ジェイコブセンが仙台戦後にこう話している。

「バスケットボールは流れがどちらにもやってくるスポーツだからこそ、『戦い続ければチャンスが来る』と考えていました。仙台さんも『勢いに乗りたい』となっていたでしょうけど、『自分たちがよりハードにやる』ということをロボッツはチームとしてやり続けられたと思います。仙台戦で良かったポイントを挙げるなら、チームとして一体となって集中を続けて、戦い続けられたことだと思います」

一方で#8ケリー・ブラックシアー・ジュニア、#13ドウェイン・エバンス、#24ニック・メイヨと、外国籍選手が1on1を積極的に仕掛けてくる広島との戦いにおいては、そこでのディフェンス精度が流れを左右した時間帯もあった。ロボッツは#11チェハーレス・タプスコットや#17山口颯斗らが代わる代わるマッチアップを組み、簡単なシュートを打たせない…となれば、おのずとロボッツが主導権を握った。GAME2ではトータルリバウンドでも競った数字に持ち込めていたことにも触れた多嶋は、今のロボッツに対して「戦える能力はある」と説く。

そして、その戦いぶりはオフェンスにも徐々に波及していったようにも見えた。

高いインサイドも使いきる

リーグ戦終盤の対戦相手は、どこも強固なインサイド陣を抱えるクラブばかり。その中で、この3試合におけるペイントエリアでの戦い方は、一つの試金石となったようにも見えた。

仙台戦では、インサイド陣が奮闘した一方で、#17山口颯斗がたびたびリバウンドをゲット。キャリアハイとなる12リバウンドを獲って、得点(14得点)とのダブルダブルを達成した。

広島戦では実際の得点になったことよりも、インサイドへのアタックやパスワークでのボールの出し入れを起点とした流動性が各所に見られ、多嶋や#2福澤晃平のアタックをチャンスの糸口としていった。また、#25平尾充庸も相手を背負い込んだ状況からシュートへと持ち込み、ギャップを突いた得点を重ねている。そんな中、GAME1を終えて、福澤にインサイドの攻略について尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「インサイドでペイントタッチをできているときは、ボールの回りが良く、相手をスクランブル(崩せている)の状況に追い込めていたので、そこでフィニッシュをしなくても、インサイドに行くことに意味があったと思っていました」

福澤は、Bリーグ最長身・身長220cmのアジアンビッグマン、#11カイ・ソットを相手にしても、リングアタックを決める場面も見せた。記者陣から別の質問で改めて尋ねられた福澤は、その場面をこう振り返る。

「(ソット選手は)大きいとは思いましたけど、スペースができていたのでゴール下まで絶対に行けると思って。時間もなかった中で、ボールを持っていた僕がアタックすることが一番良いという状況でした。僕が小さいからこそ、体を寄せて飛ばさせないようにしてシュートに持ち込むことを考えながらプレーしていたので決められました。第4クォーターでもう一度攻め込んだ場面では、『絶対に叩き落としに来る』と思っていたので、ズレることでファウルにさせることを考えました。177cmと220cmで戦ってもああいった勝負ができるっていうのは、身長のない選手の希望になるかも、とも思いました」

ただ、やはりサイズを利点に要所で絞り込む、あるいはマークマンが入れ替わる広島のディフェンスを相手に得点を重ねることは容易ではない。

「ボールを動かしつつ、ミスマッチを自分たちで見極めて『ここでアタックだ、シュートだ』と、数少ないチャンスを決めていくのが大事だと思います。ハーフコートでのオフェンスを作っていく中で、チャンスがあったのにそこで行かず、もう一度オフェンスを組み立てるとなったとき、もう1回24秒のうちに次のチャンスを作れるか、と言ったらそうじゃない部分もあると思うんです。一つのチャンスをどれだけ大きくするか。これがもう少し大事だったと思います」

GAME2の終盤には、多嶋も一つ見せ場を作った。ビッグマンを引きつけ続け、ミスマッチが生まれていたジェイコブセンへ。シュートが決まり、さらに#5アイザイア・マーフィーからのファウルも受けて3点プレーを完成させた。

「時間がないし、ズレもできていないというタフなシチュエーションでボールが回ってきてしまいました。ファウルをもらう、あるいはタフショットを狙うと考えた中、ヘルプが来ているのは分かったのですが、エリックがいるのは分かっていたんですけど、見えてはいなかった。エリックとはああいったプレーをずっとやってきていたんですけど、気付いていないということだけは嫌だったので、彼を呼びつつパスを出しました。他の人とのスペーシングもそうだし、エリックが気付いてやってくれたからこそ、というプレーだったと思います」

この先も、帰化選手やアジア特別枠などの選手を抱え、高さのあるラインアップを敷けるチームとの対戦が続く。シュート効率を上げる意味でも、ゴール下をきっちり使いきって「2点を取る」ことで与えるインパクトもある。終盤戦のロボッツに、改めて教訓を残すような一戦だっただろう。

3年ぶりの歓声とともに

広島戦では、マスク着用を条件に反復的な声出し応援が可能となった。2020年2月に行われたファイティングイーグルス名古屋との試合以来、実に3年ぶりのことである。熱戦の雰囲気を後押ししたのか、あるいはその雰囲気に押されたのか、2日間で徐々にボルテージが上がっていったシーンも見られた。攻守の間絶え間なく続くコール、相手のフリースローに対するブーイング、バスケットカウントを決めた選手への掛け声。

声出しがあった時代のホームゲームを知る選手は、今季は福澤と平尾のほか、#29鶴巻啓太の3人となった。平尾は「声出しが解禁されることで、会場に来てくれるみんなが楽しめる空間になっているんじゃないかと思いますし、応援してくれる人たちも楽しかったんじゃないか」と振り返った一方、福澤も「声を受けながらプレーをすることは、記憶がないぐらいはるか昔のことで。名前を呼ばれたりしながらプレーをすることは、改めて力になった」とコメントを残した。

一方、ロボッツの一員としてこうした応援を受けるのが初めて、という面々も当然ながらいる。コロナ禍の中で2020-21シーズンにロボッツの一員となったタプスコットは「すばらしい雰囲気でしたし、ファンの皆さんが励まして、助けてくれました」と口にした一方で、こう続ける。

「バスケットボールの試合は、こういった部分があるべき姿なのだろうなということも感じました。こういった雰囲気の中で、バスケットボールはより良くなっていくんじゃないかと感じています。ホームコートアドバンテージというものも感じますし、自分たちの志気も高まっていきました」

また、GAME2でMIPを受賞した多嶋は、直後のインタビューで「高揚感があった」とコメントを残した。記者会見で改めてアリーナの雰囲気を尋ねると、このように返した。

「元々、『雰囲気が良い』というか『気持ちが良いアリーナだ』という感覚はあったんですけど、スポーツの日常が戻り始めているとも思いますし、盛り上がりがある中でプレーできているありがたさというのは、誰しもが経験できることじゃないとも思います。そういった中でプレーをしているからこそ、勝ちを喜んで、共有したくてみんなが頑張っていると思います。残りのシーズンが少なくなってきましたけど、あとは僕たちが良いゲームをするだけだと思いますし、結果につなげてみんなで喜べる瞬間をより多く作っていけたらと思います」

上位クラブとのアウェー連戦へ

今週も3試合が行われるB1のリーグ戦。ロボッツはアウェーで3試合を戦うことになる。水曜ゲームは東地区のアルバルク東京、その後は中地区の川崎ブレイブサンダースとの対決。どちらのチームとも、B1昇格以来勝利を果たせておらず、初勝利を狙った戦いとなる。

A東京は東地区2位に付けていて、今季もチャンピオンシップ出場を賭けた戦いを続けている。チームは度々ケガ人の発生に悩まされているものの、その都度チームとしての層の厚みで勝ち進んでいる。ロボッツが気を付けたいのが、これまでの対戦でやりこめられた#1ジャスティン・コブスのほか、ディフェンダーとして立ちはだかる#2藤永佳昭、#3岡本飛竜らポイントガード陣だ。特に一瞬のコースの駆け引きから流れを呼び込んでしまえる藤永と岡本に対しては、それを押し切ろうとするのではなく、時には向かってきたところをいなすことも必要。#8吉井裕鷹や#10ザック・バランスキーなども的確にボールの出所を切ろうとしてくるため、ボールを持ちすぎずに動かしていくことを徹底して、ディフェンスの網にかからないようにしたい。

川崎はもはやBリーグのスタンダードとなりつつある、帰化選手をからめたビッグユニットが持ち味。今季は勝ち負けが不安定なシーズンを送っていたものの、終盤で中地区の首位に帰ってきた。ロボッツにとってのキーマンが、過去の対戦で全てスターターに入った#33長谷川技。シューターをコート上から消すことにかけてはリーグトップクラスと言っても良いディフェンススキルを持っていて、シューターが揃うロボッツとしては彼の餌食にならないようにしたい。

この3試合におけるキーマンは、#1トーマス・ケネディと#17山口颯斗。ケネディは得意の3ポイントをどれだけ浴びせかけるか、山口はビッグユニットが火花を散らすインサイドにどれだけ割って入れるか。仙台戦のようにリバウンドをいくつも獲得できるようであれば、それがロボッツの流れを支えていくはずだ。

チームの成長を、勝利という結果で示せるか。敵地での戦いではあるが、目が離せない。

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