【AFTER GAME】 2022-23 A東京戦(3/22)、川崎戦(3/25~26)~上位との3連戦で明確になった立ち位置。その距離は着実に縮まっている~

取材:文:佐藤 拓也 text by Takuya SATO

写真:B.LEAGUE photo by B.LEAGUE

3月22日に東地区2位のアルバルク東京と、25、26日には中地区で首位に立つ川崎ブレインサンダースと対戦。CS出場争いを繰り広げる強豪との3連戦は、結果こそ3連敗(東京戦はオーバータイムの末に76-86、川崎戦GAME1は85-92、GAME2は75-81)に終わったものの、内容に関しては3試合ともにあと一歩まで迫る接戦を繰り広げ、チームの確かな成長を感じさせた。同時に、上位チームとの明確な差も痛感させられた3試合でもあった。

確かな自信を持って挑んだ上位3連戦

「自分たちのいい流れになる瞬間は堅くディフェンスで守れている時。チームルールに則った中でインテンシティーを保って、相手にタフショットを打たせ、全員でリバウンドを取りに行く。そうやってプッシュしている状態を作ることができれば、自分たちの展開に持っていくことができる」

#8 多嶋朝飛はそう言い切る。直近17試合では9勝8敗と勝ち越しており、18日と19日に行われた西地区3位の広島ドラゴンフライズ相手にいずれも接戦に持ち込み、GAME2の第3Qには22-7と圧倒する展開を演じた。上位相手にも自分たちのバスケが通用するという確かな自信を持ってこの3連戦に臨んだのであった。

そして、ビッグラインナップの相手に対して臆することなく、ロボッツらしいアグレッシブなディフェンスを敢行。そこからアップテンポな攻撃で相手のディフェンスを揺さぶって得点を重ねる時間帯を多く作ることができていた。A東京戦は第1Qから第4Q途中までリードする展開に持ち込み、川崎との2戦とも序盤からリードを奪われる展開を強いられながらも後半に猛追を見せて、GAME1では第4Qで一時逆転に成功した。その戦いぶりにチームとして確実に進化を見ることができた。

リチャード・グレスマンHCは言う。

「自分が茨城のHCに就任した時、ディフェンス力を向上させるところからスタートしました。そこは時間がかかる部分です。しかし、継続的に取り組んできたことによって、今シーズンに関しては、B1上位チームと競い合うレベルまで来ることができています。そこにチームとしての向上を感じています」

「茨城ロボッツはあきらめない」を具現化

どうすれば自分たちの形になるのか。立ち返る場所が共有できているからこそ、どんな状況になってもファイトし続けることができている。A東京戦、序盤からリードし続け、終盤に逆転を許してしまった。ショックが残る展開にも関わらず、最後の最後まで勝負を諦めず、残り2.9秒でゴールを決めてオーバータイムに持ち込んだ。また、川崎とのGAME2では、第1Q終了時点で18点差をつけられながらも、「選手たちは戦うことをやめなかった」とグレスマンHCが後半戦の奮闘を称えたように、攻守におけるアグレッシブな姿勢を貫き、後半反撃を繰り広げて第3Qでは1点差まで詰め寄った。

「茨城ロボッツはあきらめない」

ロボッツにとって合言葉的な姿勢が精神的な意味合いだけではなく、“自分たちのバスケ”の積み重ねの上で、上位相手でも継続的に具現化できたことは、チーム力の向上と捉えていいだろう。敗戦の中に大きな希望を感じずにはいられなかった。

自分たちのスタイルをより強固に

ただ、「善戦」や「惜敗」で満足していてはさらなる成長はない。拮抗した展開に持ち込んだからこそ、浮き彫りとなった差を見つめ直す必要があるだろう。

その一つとして、ビッグラインナップを揃えるチームへの守り方が挙げられる。もちろん、3戦とも「試合を通して選手たちはタスクを遂行してくれた」とグレスマンHCが言うように、多くの時間帯で狙いとするディフェンスができていた。それが接戦に持ち込めた理由でもある。ただ、それでも、完全に抑えきることができたわけではなかった。特に相手が攻勢を強めてきた、A東京戦や川崎とのGAME1の終盤に跳ね返すことができなかったことは悔やまれる。

「僕らは高さがない分、終盤後手に回ってしまうところがありました。それでは勝つことはできない。どんな状況でもあくまで先手を取れるような守り方をしないといけない」

#25 平尾充庸は語気を強めた。

守備の対応力の向上が求められるが、同時に、自分たちのスタイルをより強固に出す必要があるという意見もある。そう口にしたのは#17 山口颯斗。

「自分たちは高さがないので、リバウンドで負けてしまうところがある。そこは仕方がないところもあるので、その分、自分たちの武器であるアップテンポなバスケをもっと出していかないといけない」

決して、守備が機能していないわけではない。スタイルが異なる相手に対して勝つためにも、より強く自分たちの特長を存分に出していきたい。そのためにもさらなる質の向上が必要となる。

たとえば、A東京戦でのターンオーバー数は相手の6回の倍以上となる13回を記録。「そこでしっかりシュートまでつなげることができていれば、もっと優位に立てていたと思う」と山口は唇を噛んだ。

また、川崎とのGAME1で川崎が21本のフリースローをすべて成功させたのに対して、ロボッツは11本のうち6本しか成功させることができなかった。また、2戦目での3ポイントシュートの成功率は川崎の54.5%に対して、ロボッツは22.2%にとどまった。そうした精度の差を縮めること、さらには上回れるようになることが勝利の条件となるだろう。

そして、勝負強さも身につけたい。象徴的な場面として、川崎とのGAME2の59-56の状態で迎えた第3Q終盤の攻防が挙げられる。お互いに5ファウル状態の中、ロボッツが畳みかけるように繰り出した攻撃に対して、川崎は2本のシュートブロックなど粘り強いディフェンスで防ぎ、得点を許してくれなかった。その後の川崎の攻撃に対して、ロボッツは川崎の攻撃時間残り1秒の状態でファウルをおかして、フリースローを与えてリードを広げられてしまった。結果的にそうしたちょっとした差の積み重ねが勝敗を分けたと言える。

悔しさを無駄にするわけにはいかない

CS出場圏内に入るチームとの対戦で3連敗を喫したとはいえ、悲観的に捉える必要はまったくない。現在、ロボッツが立っている現在地が明確になり、上位との距離が遠くないことを実感できた経験は選手たちの自信となり、さらなる成長の糧となるだろう。ただ、その差を埋めることは簡単ではない。ここからさらに上に行くためにも、より強い意識と信念を持って、チーム一丸となって前進し続けなければならない。

「全員があと一歩、二歩ビルドアップしていけば、強豪チームに勝つチャンスはもっと高まると思っています」

山口は自信に満ちた表情でそう口にした。

次なる相手は中地区4位の信州ブレイブウォリアーズ。

「(信州は)すごく堅いチーム。いろんなことを細かくやってきますし、守りづらいオフェンスをやってきます。ディフェンスも含めて、気の利く外国籍選手もいる」と多嶋は印象を語る。そして、こう続けた。

「スペーシングやフォーメーションなどスタイル的にA東京に似ている」

あと一歩で勝利を逃した悔しさを無駄にするわけにはいかない。

「上位相手に惜しいゲームが続いているからこそ、次は勝ちたい。自分たちが我慢比べで負けなければ勝てる相手だと思います。ゲーム中にいろんなことが起きると思いますが、選手同士でいいコミュニケーションを取りながら判断してプレーしていきたい。そして、ホームゲーム。ブースターの熱い応援がホームアドバンテージになるので、後押ししてもらいたいと思います」と多嶋は力を込めた。

上位との3連戦でつかんだ自信を確信に変えるべく、そして、確かな成長を結果という形で証明するために、ホームでの戦いに挑む。

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